不動産鑑定評価理論は需給均衡理論を中心とするミクロ経済学に法律学、会計学等の多種多様な学問を集大成したものから構成されている。
しかしながらここ10年の社会構造の変化、とりわけ急速に進展した不動産の証券化においては現行基準の評価手法は追いついていないのが実情である。
本稿ではファイナンス理論の立脚し金融資産の代替投資対象としての位置づけにある実物不動産の価格評価の見地から現行基準の問題点を抽出し、それに対してどのような改定の方向性が妥当かを検討した。
具体的にはまず、資産価格に対して現行基準とファイナンス理論とのアプローチの相違を明らかにし、次に価格概念、リスク概念の違いについて整理した。
更に現実的に資産評価に適用する評価手法について批判的に検討するとともに、都市経済学の視点も織り込む必要性を明らかにした。
最後に基準改定に関連して情報インフラ整備の必要性とその具体的なあり方について検討した。
ただし、本稿はあくまで現段階での到達状況を示すものに過ぎず、ファイナンス理論と不動産鑑定評価基準との融合にはまだまだ理論的な実証分析が必要であり、改訂の方向性についての参考程度のものである。
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