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不動産鑑定豆知識
 
 
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鑑定評価手法:
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鑑定評価に関するトピック
 
 
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 鑑定評価手法
 
    DC法  
1.直接還元法(DC法)は名前の通り、単年度の純収益を還元利回りで直接的に還元して対象不動産の価格を求める手法で、複雑な計算がなく、誰にでもわかりやすいのが特徴です。
 
2.単年度の純収益は安定運用されている場合以外は初年度の純収益ではなく、標準化された純収益です。
標準化された純収益は過去の実績、現在の状況、将来の予測等を踏まえて査定します。
また、一定の趨勢で純収益が増減すると見込める場合には分母の還元利回りに成長率(g)を織り込んで査定します。
 
 
 
3.この場合の純収益は会計上の利益ではなく、ほぼネットキャッシュフローに近い概念であり、したがって、減価償却費等の非現金支出は控除しないこととなります。
ただし、資本的支出準備費といった将来において確実な現金支出予定額は控除することになります。
 
4.純収益には資本的支出準備費控除前のNOIと控除後のNCFの二つがあります。
 ◇NOI(ネットオペレーティングインカム)=EGI(有効総収益)-OE(運用経費)-預り金運用益
 ◇NCF(ネットキャッシュフロー)=NOI-CAPEX(資本的支出準備費)+預り金運用益
 
5.収益価格はこの純収益を還元利回りで還元して求めることになりますが、純収益の種類により還元利回りにもNOIキャップレートとNCFキャップレートの二つがあります。
 
6.還元利回りの求め方には@類似の取引事例との比較、A借入金と自己資本との組み合わせ、B土地と建物の還元利回りの組み合わせ、C割引率との関係(R=y-g)等から求めますが、実務上は単体の不動産であれば@の比較方式が多く用いられているようです。
Aの方式はWACC(加重平均資本コスト)といわれる方式で、企業収益にもとづく収益還元法を適用する場合に用いられます。
Bの方式は建物の還元利回りに償却率を含ませるため、新築建物の還元利回りに用いられます。
Cの方式は汎用性があるものの、成長率(g)をどう取り扱うかにより結論が大きく変わります。
 
7.また、これらを補完する材料として財)日本不動産研究所等が実施している各種の利回り調査の結果を利用します。(グラフ参照)
グラフでは東京都心部と主要都市における投資家の投資態度の推移を示したものです。
これをみると最も期待利回りの低い(価格の高い)地域は大手町・丸の内地区で、直近では結果を利用します。(グラフ参照)4.3%となっています。(グラフ参照)
日本橋、赤坂、西新宿といった都心部では5%となっています。大阪、名古屋といったその他の主要都市でも6%を下回る水準となっています。
全体を通して期待利回りの低下(価格の上昇)がみられます。還元利回りの査定においてはこれらの水準や推移に個別不動産の優劣を織り込んで決定していくこととなります。
 
 
 
8.また、REIT等の取引で個別不動産の還元利回り(NOI-CAPレート)が観測できますので、これらのデータを定量的に分析することによっても把握することができます。
REIT事例はディスクローズされている取引要素が多いので、これらの取引要素を対象不動産に回帰(当てはめる)させることにより、数字的に説明することができる場合があります。
たとえば都心型投資用マンションの例ですと、月坪NOI、建築経過年数、容積50%超といった取引要素を説明変数にすると60〜70%程度はこれらの要素で説明できることになります。
ただし、この回帰分析も万能ではなく、マンションについては不動産についての同質性が高いので、回帰分析も有効ですが、事務所に関してはテナントの質といった定性的な要素も大きいので回帰分析の精度は低くなります。
ニッセイ基礎研究所によるJ-REITのNOI-CAPレートの要因分析(ニッセイ基礎研REPORT05−4)においては10個の説明変数を用いて回帰分析を行ってもその決定係数(説明しうる範囲)は40%程度にとどまっており、分析の難しさを反映しています。
 
 
9.収益還元法においては分母である還元利回りの水準如何によって価格水準が大きく変わってきます。
当社ではJ-REITの取引事例を中心に収益物件の事例をデータベースにして整備しており、このデータを用いて回帰分析を行うとともにテナントの質や管理・運用の状況といった定性的な比較を行い、合理的に説明できる還元利回りを採用する方針としております。
 
    DCF法  
1.DC法(直接還元法)では単年度の標準化されたキャッシュフローを還元利回りで還元して収益価格を求めます。
これに対してDCF法では発生時期の異なる複数のキャッシュフローを現在価値に割り引いて価格を求めます。
右辺第1項は期間収益の、第2項は転売復帰価格の割引現価であり、これを合計したものがDCF法による価格ということになります。
 
 
 
2.下記の設例では5年間の純収入キャッシュフローと5年目末の転売復帰価格(RP)をそれぞれ同じ割引率で割り引いて求めています。
 
3.割引率は国債等の債券の最終利回り(YTM)とほぼ同じ概念で、不動産を運用満了時まで保有した場合の平均収益率を表示することになります。
 
4.これは上記の算式を次のように書き直すことで明確になります。
 
 
 
右辺はキャッシュフローの将来価値、左辺は投資額が一定のレートで成長した結果を示しており、このレートが割引率となるわけです。
 
5.割引率を求める方法には@取引事例との比較、A借入金と自己資本との組み合わせ、B金融資産利回りに不動産の個別性を加味する方法がありますが、いずれも@はデータによる裏付けが困難であり、実際にはA,Bの方法を併用することになります。
 
6.復帰価格は運用想定期間満了時の転売想定価格で、運用想定期間翌年の予想純収入キャッシュフローをターミナルレート(Rt)で割り戻して求めます。
 
7.ターミナルレートはDC法で用いた還元利回りに建物陳腐化相当率や収益予測に伴う不確実性を加味して査定します。
 
 
 
 
    DDCF法  
1.ダイナミックDCF法(DDCF法)は基本的な計算構造はDCF法と同じですが、DCF法が計算のパラメーターが固定されているのに対し、DDCF法においては変動予測がされるパラメーターについてこれをダイナミックに捉え、価格についても確率分布で表示しようとするものです。
 
2.ダイナミックにするパラメーターとして考えられる要素はいろいろありますが、基本的には賃料変動率、空室率、リスクフリーレート、リスクプレミアム、復帰価格、ターミナルレート等があります。
 
3.これらが一定のものではないとすると価格についても一定ではなく、正規分布により、求められます。
 
4.設例ではキャッシュフロー水準、空室率、リスクフリーレート、リスクプレミアムについて変動することと仮定し、
 
 
 
下記の算式によりDDCF法による価格を求めます。
 
 
 
5.変動条件は過去の変動実績から個別のボラティリティとして設定します。
この場合、パラメーター間に相関関係の認められる場合(たとえば空室率と賃料変動率)には相関の設定を行います。
 
6.上記の条件によりキャッシュフローのパスを描画すると下記の通りとなります。
描画されているのは100本のみであるが、実際に計算を行う場合には100000本以上のパスを導出することになるので、考えられる限りのあらゆるケースを想定して試算することになります。
 
 
 
他のパラメータについても同様にパス導出を行い、それぞれの変動条件を組み合わせて価格分布を取得することになります。
 
7.パスの導出にはEXCELでも可能であるが、スピード化のためCrystal Ball, @Riskといったシミュレーションソフトを用いる。本件ではエクセルをベースとするCrystal Ballを使用しています。
 
8.下表は主要なパラメーターのみを表示した簡易の査定シートで、これに変動条件を与えて価格を求めます。
 
 
 
9.計算結果は以下のグラフのように確率分布で表現されます。
本件の場合、10万回の試行でその期待値が1,897.4Mなので、これを評価額として決定します。
なお、標準偏差1の価格分布の範囲は上下12%強となります。
 
 
 
また、5%の確率で価格が1,529M以下になるリスク(VAR)があることもわかります。
 
10.このDDCF法を用いることにより、DCF法では把握できなかった価格の変動範囲が明確になり、DCF法による価格が想定しうる変動条件の中でどの水準にあるのかを知ることができます。
この価格分布の期待値よりも高ければ好調なシナリオ、低ければやや保守的なシナリオによる価格という評価ができそうです。